笠井潔『サマー・アポカリプス』

サマー・アポカリプス (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

サマー・アポカリプス (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

人を殺してはいけない理由を誰が正当に説明することができるのでしょうか? 逆もまた言えることで、人を殺しても良い理由を探しても見つかりません。理由で人を殺すのではないのかもしれません、では何故殺すのでしょうか? 人をそして自分を。すべてを覆すような自分がよりどころとする信念を持つ人がいます。命をかけてでも守りたいものを守るために話し合いと言う解決方法をとることができなくて暴力に物を言わせることもあります。カッとなって殺してしまったと言う人もまたいます。どれが正解かは私は解りません。ただ、この人を殺さない生活が日常だと殺す瞬間は日常から逸脱するような何かに力を借りる必要があるような気がします。
もし絶対に誰にもばれないとしたら人を殺せるでしょうか? もし命を奪おうとも罪にならないとしたら人を殺せるでしょうか? もしルールだから仕事だから、あいつが悪いことをしたから、などなど理由が自分の中に堅牢にあるとして人を殺せるでしょうか? 私は殺せません。まだ生きていたいから。限りなく自己愛な感情ですが、自分がされて嬉しいことは相手が嬉しいかどうか解りません、ですが自分がされて嫌なことは人がされても嫌なはずだと思っています。そしてまた、自分が大切な物を奪う相手に対して話し合いが通じないのなら力を使うかもしれないとも思っています。
殺人の是非。様々な立場で考えいろいろな答えがでてきます。その中で自分の目指先に近づける答えが現時点での正解です。この正解は絶えず考え続ける正解なのでしょうね。