サラ・ウォーターズ『茨の城』上

荊[いばら]の城 上 (創元推理文庫)

荊[いばら]の城 上 (創元推理文庫)

同じ物事にも登場人物が2人いれば視点が2つになる。その人にとってはその視点こそが正であり、他の視点があることは想像しかしてないし、想像すらしてないときもある。全く正反対の事を思っていることもあれば、心が1つになったかのような感覚を覚えることもある。とても満ち足りた気分になる時もあれば、どうしようもないくらい心の隙間が胸に突き刺さることもある。それでもこの時間は刻まれていく。それぞれの思惑なんてかまわずに時が過ぎていく。この幸せを失うくらいなら悪魔にでも魂を売り渡そうかと、愛故に愛だからすべてがこれを理由にされ、この言葉にエネルギィをもらう。頭では知っている、いくつもの作品で触れてきてはいる、だけどそれが自分の心にやってくるときは想像しようとしてもできるものではない。この瞬間のためだけに今までがあった、一瞬で形の無い時間だから永遠、心が心を求め続ける。人は人に惹かれる。