佐々木丸美『雪の断章』

雪の断章 (講談社文庫)

雪の断章 (講談社文庫)

いったい何処をみつめているのだろうか? 主人公の視点だけで語られる物語ゆえに、感情が同調して感じられるようで、その奥に確かに存在する作者の視点を意識する。その視点から自分自身の至らなさまで見せられた気がする。最後のページを読み終えた瞬間「すごい物語を読んだ」って一言呟いた。

季節は巡り続ける。時が止まって欲しいと願うこともある。この時が永遠に続けばいいのにと願いながらも、容赦なく季節は巡り続ける。地球の回る速度は変わらなくても、人の内を流れる時はそれぞれ違うのだ。その中で多くの選択をしていかなければならない。素直になれないことは選択のときに大きな負荷を背負っているようなもの。自分が本当に何をやりたいのかを見えなくさせて、自分が選んだものを本当にやりたいことだと信じて進みはじめる。でも、どこかで見てくれている人がいる。等身大の自分をみつめ、その先の成長を信じている人が。

幸せって何なんだろうね。幸せになって欲しいと願う気持ち、幸せになりたいと歩く道。外は大雪が降っている午後。読書を選択した自分。この日にこの作品を読めた。雪を思い出す作品が私にとってまた1つ増えた。この時の心の動きを思い出すように。