デイヴィット・ハンドラ『傷心』

傷心 (講談社文庫)

傷心 (講談社文庫)

自分が相手のことを想っているからといって、相手が同じことを自分に対して想っているとは限りません。このことを私が知ったのはいつだったでしょうか? とてもとても幼い頃、この当たり前な事実に気が付いてものすごく恐ろしくなったような記憶があります。例え解っていたとしても、それよりも魅力的な事実を信じて何度か飛び込んだこともまたあります。真逆もまた思い出になっています。こうあるはずだから、かくあるはずだから、私はそれが嬉しいから、それが原動力になることもあります。ですが、それだけを原動力にして何をやってもいいとはなり得ません。同じく相手もまた相手の嬉しいことがあるんです。
科白1つ1つに相手の心を思いやって、雰囲気を読みあって、優しく何よりも格好良い科白がしゃべられることはとても素的なことです。ここは例え家庭を持とうとも心に生きている人がいる限り変わらないのでしょうね。