ピーター・ラヴゼィ『偽のデュー警部』

偽のデュー警部 (ハヤカワ・ミステリ文庫 91-1)

偽のデュー警部 (ハヤカワ・ミステリ文庫 91-1)

自分が自分以外の自分に見られてしまう。偽物と本物の境界線は周りに引かれてしまうもの。自分が決める自分すら、閉じた世界の中では特定の役回りが与えられ、その役を演じてしまう。どんなところでも役割を演じているのだとしたら、本物ってなんなのでしょうね。その場で決められたものが本物なのだとは思います。
舞台を整えるまでの1つ1つの場面に登場するキャラクタ達がとても心地よいです。科白の一言一言からその人たちの性格が伺え、描かれた視線からその人の雰囲気が伝わってきます。謎を解決することがミステリィなのではなく、謎自体に魅せられるミステリィです。最後の驚きとそこへ届けてくれる力。ちょっとした描写による何でもない場面がとっても映像的でそこで動き回るキャラクタ達が想像できるようで、映像を展開していく面白さがあります。