森博嗣『封印再度』

封印再度 (講談社文庫)

封印再度 (講談社文庫)

自分が自分で無くなるような、いえ自分を自分で無くしてくれるような人っています。その人以外の人と話している時は別になんでもないことなのかもしれませんが、一度その人に何かが起こると考えると考えることができなくなります。考えが不可思議な方向へ転がっていってしまうと言う方が正確かもしれませんが。自分の思いに気づかされる瞬間でもありますし、またその人への思いを伝えられる瞬間なのかもしれません。相手をどうすれば喜ばされるか? そう考えているつもりが気が付くと空回りしていたり回ってもいなかったりすることも多々あります。
想いとは形のないものです。形の無い物は伝えることができません。保存することもできません。だからこそ、想いを形にしようとします。そこに隙間が生まれ、その隙間を埋めるためのものをまた相手を思うことで探し続けていきます。言葉を尽くしても伝えたりない想いがある、だからこそもっともっと言葉を尽くそうと想う、行動しようと想う。とても幸せな時間です。傍目では滑稽なのかもしれませんが、そんな人がいることはとても幸せな時間だと私は思います。