森博嗣『すべてがFになる』

すべてがFになる (講談社文庫)

すべてがFになる (講談社文庫)

何度めでしょうか? この作品は何度も私は読み返しています。実際新書判で一冊、文庫版で二冊買いました。こうして作品を読み返す毎に新たなる発見があります。
事件を起こした犯人も知っていますし、この事件に用いられたトリックも再読ですから、知っています。そこを読むのではないからこそ、そこを発見したいのではないからこそ、こうして何度も読み返せてしまうのでしょうね。私は、森さんが描かれた世界を通したときに感じる自分自身と、読了後により鮮明になる自分の周りの世界が好きなんです。韻律が心地よく響いてきます。視界がより明瞭になった感じを受けます。
特にこの作品は、森さんが描いた小説の中で、私が読んだ最初の小説です。あの日の衝撃は覚えていますし。こうして読み返すことでまた新しい衝撃を受けています。頭に浮かぶ映像の派手さはこの作品が一番だと思っています。
今回のように最初から最後までを通して読み返すこともあります。また、適当なページを開いてそこだけを読むこともまたありますし、好きな言葉だけを拾い読んでいくこともあります。既刊のVシリーズを読了したあとですから、また違って見えるものが増えていることがまた素的です。これからまたシリーズを読み返していく予定です。
誰もが持っている時々読み返しては自分の心を研いでくれる作品の1つが、私にとってはこの作品なんです。