殊能将之『美濃牛』

美濃牛 (講談社文庫)

美濃牛 (講談社文庫)

好きな作家が読んでいることを切っ掛けに新しい作品や作家を知ることが、新しい作品との出会いのパターンとしては多いです。この殊能将之森博嗣が以前WEBの日記で書いていたことを切っ掛けにして読みました。書評ではなく、ただ読んでいるってことを知ることで、その作品を私が読むことで作品から受ける思いと、その作家が受けた思いとの差異を感じることができて楽しいです。
1冊はその作家つながりで読むことはあります。『ハサミ男』がまさにそれでした。2冊目以降を読むのは1作目に読んだ作品がとても面白かったからです。『ハサミ男』のような話かなぁって読みすすめたのですが、それとは違う今までにない懐かしさを感じて読めました。私のミステリィを読んだ初期世界に還ってきたような安心感がありました。そう、横溝正史ばかりを読んでいた中学生の頃のことをふっと思い出します。構造はそうではないのですが、出来上がった世界が懐かしい。言葉の持つ可能性に惚れます。
この作品は、新幹線が名古屋を出発して京都に着く間に読了しました。まさに美濃の国の辺りで読了できたのは詩的です。