山本文緒『パイナップルの彼方』

パイナップルの彼方 (角川文庫)

パイナップルの彼方 (角川文庫)

どこかで読んだことのあるような、どこにでもあるようなテーマにどうしてここまで惹き込まれるのだろうか? 言葉でどこまでの世界を描くことが出来るのだろうか? 捉え方。その人を表すための言葉って沢山ある。それを聴いて、姿を目の前に浮かべる。自分の視点が作品と同調し、思い出さされる。鏡を見つめているように描かれる自画像。写真では写されないそれ。甘い香り。強い酸味。独特な形。翔ぶ想像。本当に得たいものが分からずに、今目の前にあるものにある幸せが全てだと思う。無い物ねだりをしていないだけなのか……ただ幸せには色々な形があり、何を幸せに思うことも違う。日々回り続ける歯車、ある拍子でその回転が乱れる。永遠をどこかに観ている。等身大の自分。