上遠野浩平『ブギーポップ・イン・ザ・ミラーパンドラ』

読了時に漂う奇妙なまでの後味の悪さ。何か切り刻まれたような不安定感。そんな言葉にすればするほど薄くなる感覚に駆られる小説。別れる事は辛い。例え再会を誓い合っていても、また会う予感がしていても、移り行く現実の力、もしかしたらそんな力自体が幻想なのかもしれないと思わされる力は圧倒的で、いつの間にか思い出と名前が付けられるj物に変わって行く。それを恐れ、絆を求める、理由なんて要らない。ただ一緒に居たい、そいつの事が気になる、それだけの事がもっとも重要な事。そしてそう思える瞬間こそが生きていて良かったと思える事の一つ。綺麗な別れなんてストーリィの中にしか無い。だからこそ果てしなく美しく思える。名をパンドラと称す。