上遠野浩平『ぼくらは虚空に夜を視る』

ぼくらは虚空に夜を視る (徳間デュアル文庫)

ぼくらは虚空に夜を視る (徳間デュアル文庫)

今いる世界が現実なのでしょうか? 現実と夢との境界線はどこで引けるのでしょうか? 古典の世界から語り継がれてきたテーマではあります。私が蝶の夢をみているのですか? それとも蝶が私になった夢を見ているのですか? って感じで日本だけではなく中国でも語られています。それで終わると古い話になってしまいますが、そこに今の風味が加わっていきます。学生時代によくみた映画にも今の世界がコンピュータが描き出した幻想だって話がありましたね。この作品も舞台は似たような世界があります。ですが小説は舞台やテーマやもちろんトリックだけでもないんだなぁと読む毎に思います。
一人一人に物語があり、それらが綺麗に収束していく描き方は『ブギーポップ』の頃から読んでいますが、世界はそのような色んな人の物語が折り重なってできているんですよね。今視ている世界、事実は多くの人が調べています、その中で真実は誰もが自分で決めています。
ふと空を見上げます。ときには夜空を見上げます。高く高く。自分で決めた想いを空に投げてみるのもまた楽しそうです。