森博嗣『詩的私的ジャック』

詩的私的ジャック (講談社文庫)

詩的私的ジャック (講談社文庫)

S&Mシリーズの第4作です。実際に書かれた順番は3番目でしたが、"F"を最初に刊行することになったために、第3作が第4作になったのは、少しWWWを検索するとすぐにでも見つけられるお話です。本作のタイトルがシリーズ中一番高価だと言ったのも森さんでしたね。でもそんなことって読書する上では何の役にも立たない知識なんですよね。読んだときの想いを書き残しておこうってときには思い出しますけど、読んでいる最中ってホントそんなメタな視点に立てません。大半のセンサはシャットアウトして活字の世界を旅しています。残しているのは、耳のセンサの一部くらいでしょうか。こういう風に考えることは別な意味でメタなのかもしれませんが……。
人の本質を理解することは大変難しいことです。不可能なことなのかもしれません。でも伝えたいことがあるのなら伝えることが大切です。伝えたくないことは伝えないこともまた大切なのかもしれません。伝え方はさまざまありますが、日常利用していてもっとも応用範囲が広い伝え方が言葉を尽くすってことなのでしょう。そのために言葉はあるのですから。恥ずかしいとか負けたくないとかではなく、ただ伝えたい想いがあることは幸せです。傍目には無駄なことなのかもしれませんが、この自分の内なる想いこそ自分が自分を決める最大要因なはずです。