上遠野浩平『ブギーポップ・ウィキッドエンブリオ炎生』

描こうとする世界は変らないのだが、それを描く技術は少しずつ変化し進化してきている気がする。最初はその技術が魅せる独特の同調感覚に落とされていたのかと、だがやはり本質的な描かれる作品の方がより俺を惹きつける。誰もが悩むこととして割り切るのでもなく、一側面からみた答えを示す。この場面での正解が別の場面での正解にはならない問いと答え。作者も延々と考え悩み続けたことなのだろう。答えを見つけた瞬間、その答えがわからなくなるような感覚。小説のみが創り得る妖しさと想像力。炎をみて落ち着く時水の流れと同化する時時に激しく、時に優しく。