森博嗣『人形式モナリザ』

人形式モナリザ (講談社ノベルス)

人形式モナリザ (講談社ノベルス)

この人の文章を読む時、俺は読者として犯人を探す事は止める事にしている。ただ、そこに散りばめられた謎、そう殺人と言う形をとらない謎に心を動かされる。犯人は誰だ、どうやって実行したのか、だけのミステリィでは無い、だからこそ何度も同じ作品を読み返し、ふとした瞬間にこの世界が自分の中にも生きずいた事を認識する。全ての、シリーズを通して語られている、人となりもある。一作毎に見えかくれするものもある。読者として、文章を読むと同時にその作者を観ている。様々な自己表現の方法の中で小説と言う手段を持つ人がいる。そうやって形を模して、何かに影響を受けつつ操られる。動力は内蔵されている。操られるのも自分、操っているのも自分。生きているって言うのはどういう事なのか?