北村薫『空飛ぶ馬』

空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

織部の霊」

生残な事件は起きていない。ただ、その人の心の中にはとっても大きな重さを占める出来事。そんなものを静かに描いていく。これもあらすじを聞いただけでは面白さがわからない小説。こういう言葉も素的だなって思う作家。魅惑的なキャラクタたち新しいシリーズ

「砂糖合戦」

紅茶屋さんで紅茶のみたいな〜この辺でおいしい紅茶を飲ましてくれる専門店って俺知らないからな〜珈琲店はあるらしいのだけど、紅茶屋を知っている人っていないからにしても、このストーリィ、何で面白いのかわからないのに読んでいてとっても惹かれてしまう。やられたぁって気持ちでなく、うんうんとうなずいてしまう読後感が好き。

「胡桃の中の鳥」

すべてのエピソードがラストまでに収束しそしてその一点からは更に先を想像させる、期待がある。もしも、一年前のこのストーリィを読んでいたら、また違った点が気になって読めなかったかもしれない。そして今読むからこそ、新しい事に気づき、そういう気持ちで読む事も出来る。どこに視点を置いて読むかによってとってもつらいものになりそうなストーリィ

「赤頭巾」

童話が最近流行しているらしい。そんな事が関係ない頃に書かれた面白い短編。俺もこれが描かれた頃から童話と言うものを興味を持って読んできた。気がつかされる事がとっても多い作品。今まで何気に流していたことの奥底に潜む意味を知る。絵が浮かぶ、場面が浮かぶ、絵本を読んでみたくなる。

「空飛ぶ馬」

こうして一冊の短編集を読み終わってみて、ひとつの長編ストーリィのような錯覚を覚える。個々の作品はそれで簡潔しているのだろうけど、この微妙なつながりがとっても心憎い。こういうミステリィもあるんだな、そしてこういうミステリィも面白いなって新鮮な感動。今までがメフィスト連載でしか知らなかった作家なので、こうしてまったく違うスタイルの素的な作品に出会うと、とても嬉しくなってしまう。追いかけていきたいシリーズがまた増えた。