京極夏彦『陰摩羅鬼の瑕』陰摩羅鬼の瑕(おんもらきのきず) (講談社ノベルス)作者: 京極夏彦出版社/メーカー: 講談社発売日: 2003/08/09メディア: 新書購入: 1人 クリック: 48回この商品を含むブログ (194件) を見る

形はあっていても、何かが違うことはよくあります。世界で生きるうちに、当たり前という形で済ましてしまい、考えることすら停止してしまっていることが多く。正解不正解を決めるのは自分自身ですし、その正解には、周りの世界との齟齬に気が付かないているのならば、何を選んでもかまわないのでしょう。選んでいることすら知らないで当たり前のように自分の血肉になっているのかもしれません。教えられなくても、考えなくても、基本的な所で経験で知ってしまっていて。それがとても楽な考えなのかもしれないけど、とてもぬるい。相手の考えと自分の考えと、何でもない差異に気が付かされるとき、どうしようもないのかもと思ってしまいます。何のために、どんなために、目的は? 意味は? 何より、意味が必要なのか? こうして考えることが、こうして感じることが、華麗に絡み合って、瑕ついてしまって、痛さには気が付かないのだけど、切なくやるせなくなる。物語の中に自分自身が深く入り込んでしまうような、そんな感覚が、心地よくて、痛くて、好き。あるようで、ないようで、ふっと後ろを振り返って。前を向いて。読了して、読み返して、読了して、読み返して。決めないでよいことを決めずに、目の前の世界を目一杯受け止めます。とてもとても面白い作品でした。