時雨沢恵一『キノの旅』VII

日常生活もまた旅をしているようなものなのかもしれません。私がそう想像すると至る所に旅の気配は満ちています。1つ駅を超えるだけで町の持つ力が変わって感じられるのはファンタジィの世界と似たものがあります。似たように感じられることが私が世界にはまっていることを教えてくれます。
それらの違いを町のもつエネルギィの方向性をより著しくしていくとこんな作品に登場するような国ができていくのでしょうね。一人一人が信じているものは違います。共同体としてあることにはその差を少しずつ縮めていきます。そうやってまとまることは、また別な国との境目を広くすることにもなります。その国しかしらないのならば、似たものの中で暮らすのは幸せなことなのでしょう。ですが、人は想像します。今とそしてこれからを。旅をするということは、その想像を形にしていく行為の1つなのかもしれませんね。自分の生まれたところの良し悪しはわからなかったけど、旅人の言葉に心を動かされて、自分から旅にでようとしたのですから。
私もまた普段から旅をしています。同じ場所を同じ道順で往復することもまた多いですが、決して同じことはありません。日々気持ちは広く深くなります。世界をとても美しく感じています。それゆえに美しくなくもまた感じています。とても心地よい瞬間です。