森博嗣『笑わない数学者』

笑わない数学者 MATHEMATICAL GOODBYE (講談社文庫)

笑わない数学者 MATHEMATICAL GOODBYE (講談社文庫)

仕事することを決めます、残業することを決めます、遊ぶことを決めます、眠ることを決めます、作ることを決めます。どんなときでも何かを決断するときには、ほかの何かを切り捨てているのでしょうね。この時間はこれをすることを決めました、と言うことを言い換えると、この時間は他のことはしませんっていうことなのですから。ですけど、この中にこそ自由を感じます。自分で決めることを投げ出してしまって、慣習ですとか人の言葉ですとかその他さまざまなものに任せてしまうことは、誰にでもできます。自分の頭で考えないことは、楽なのかもしれませんが、面白いことは何もないような気がします。自分で考えて自分で選び取っていくからこそ、つらいことも多いのですしそれ以上に面白いこと嬉しいことが増えていくんです。
では、何をどこから考えるべきなのでしょうか? 問題は与えられることも多くあります、それより多くの問題に気づくこともまたあります。それら問題を自分で解決することもありますし、人にお願いすることもあります。問題を出題して、回答を導くことをクイズのようにパズルのように楽しむこともあります。そのうち、私が感動するのはなんでしょう? 私が感動を与えられるのは何でしょう?
考えるのは好きです。決めることはそれ以降の話になります。今決めた物事が明日も同じ決心になるかどうかは私には解りません。ですが、今決めたことは必ずつながっていくのです。だからこそ、私は考え続け選び続けます。