マックス・エルンスト『百頭女』

百頭女 (河出文庫)

百頭女 (河出文庫)

何なんでしょうか? この作品は。さっぱり解りません。でも、この作品には、ページを繰る毎に惹き付けられるんです。一枚の絵とその絵の下に添えられた短いキャプションそれだけ、それが何ページも続いて世界が静かに力強く展開していっていつの間にか最後のページを読み終えていました。読み終えた瞬間、また返りたくなり。何度も何度もページを捲ってしまいます。解らないんです、読めば読むほど。そのページだけの解釈をすることもできます。もちろん、連なった世界観に自分の世界を照らし合わせてそこに意味を見いだそうとすることもできます。でも読んでいくうちにそこに意味を見いだすことすら下等なことに思えてしまうんです。そして、上等下等で比較することが誤っていることに気が付くんです。あるものをあるがままに受け止めて、それを自分の頭で考えることがとても面白いんですよ。背筋がさっと冷たくなります。
同じ方法を用いて、私が表現をしたらどんなものができるのでしょうか? コラージュは1つの技法、それに添えた言葉もそう、全体を占めているこの雰囲気を継承することは難しいでしょう。でしたら私だけの世界観を広げることができるでしょうか? どこまで抽象化できるか? どんな視点から世界を見つめているのか? 考えさせられます。百頭女とはいったい誰なんでしょう……。解りません。それが面白い作品です。