上遠野浩平『ブギーポップ・カウントダウンエンブリオ浸蝕』

殻の中で生きる。殻を突き破る。殻から抜け出す。自らが殻の中に居ることに気が付かされる瞬間。中で生き動こうとしているものは柔らかく可能性に溢れているのだが、その周りを取りまく殻は堅く外界への広がりを絶つ。そしてそれは同時に中を守る役割も果たしてくれている。暖かさと優しさ。だが、安定の中に居ることが自らを腐らせることにもなりかねない。自らの目指す道があり人はそれにむけて努力をする。不意に自分がその意志すら裏切っていた事実に気が付かされる。他人に裏切られるよりもやるせなくそして辛い。逃げると言う選択枝をとることが出来ない相手が自分。それがいけないとは誰にも言うことは出来ない。だからこそ辛い。