森博嗣『月は幽咽のデバイス』

月は幽咽のデバイス (講談社ノベルス)

月は幽咽のデバイス (講談社ノベルス)

何のために生きているのだろうか? その根元的で答えの定まらない疑問の解答を得たようにかんじる瞬間がある。このために生きつづけたいと思うような時。捕まえたと思ったらすぐに自らの内から逃げ出してしまうくらい弱くもろいものだけどただその瞬間の言葉にしてしまうことが陳腐に感じられるほど貴い感情には涙を流される。悔しさの方が先に来ているのかもしれない、もっと前にはやるせなさや情けなさが残っているのかも。そんなわけの判らなくなりかけた気持ちを抱いて進みつづける。複雑な己をそのまま受け入れることができる器と、何かで薄くして形を判りやすくしないと受け入れられない器。幸せとは直結しないけど自らの技量と置き換えることが可能なもの。頭の片隅で一つのことを考えつづけ悩み続ける。