J.D.Salinger『ライ麦畑でつかまえて』

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)

今の俺はいったいどっちの世界に属しているのだろうか? どちらの言いたい事も理解できる。自分の価値観は持っているのか? 安定と不安定の間を移り変わる不自由な自然さ。何を書いてあるのではない、今そこにあるそれ。読むのではなく、パラパラとページをめくって止まった所にある鋭利な言葉、主人公が語りかけてくれるように物語は進んで行く事も一つの理由なのだろうけど、切られる言葉が多い。この書き方を読んでいると真似してみたくなる、会話のような手紙のような味わい。でも深く読んでいくと真似る難しさが先に来る。恐さ。全てを悟って判ってそしてさらけだしてしまいそうな、恐さ。主観と客観を切替える技術。