真保裕一『ホワイトアウト』

ホワイトアウト (新潮文庫)

ホワイトアウト (新潮文庫)

行間とこの先に起こるだろう事をあれこれと想像してみたくなる話。かなりの細部まで綿密に書き込まれているその奥を感じてみたい小説。強大なる雪の恐怖。俺が知っている最大の雪はスキー場辺りの雪山のもの、これらとは比べ物にならないくらいの雪。白い雪に意志をそれも、悪意を感じてしまう時。その意志と自らの内に存在する精神力との戦い。頼るものはなにもない、武器になるのは、己の体力と経験だけ。様々な視点から一つの大きな事件を描き切る。事件から、背景から……トリックに溢れるミステリィの味わいを持ちながら、生きる事をかけて戦う冒険小説。勧められて大正解の本。こうしてまた一人気になる作家が増えて行く。