栗本薫『真夜中の天使』(3)

単なるBOY'S LOVE、JUNEテーマでは終らなかった。一つの恋愛小説の形だとは思う、でも恋愛そのものを描いたものではない、もっと根源的な自分の存在とか、周囲の関わりとか、生きる事の形とかそんなものを感じる。生きる事を見据えて生きる人がいる。死を見つめて生きる人がいる。気が付いたら生きていた人がいる。そして、何も考えずにただ生きている人もいる。究極の所で人は孤独なんだろう、友がいても、恋しい人がいても、働いていても。それを癒そうとする程、その穴の中に落ち込んで行く。その縁を綱渡りしつつ生きる人がいる。何をしていようと、隣の芝は青く見えるもの、みんな不安で、みんな寂しい。一瞬の清涼を求める思い出と心中する。