加納朋子『ななつのこ』

ななつのこ (創元推理文庫)

ななつのこ (創元推理文庫)

短編小説と打たれてはいなかったけど、読み進めるうちに短編なのかなぁと思わされ、ラストの一編で一つの長編であることに気が付かされる。両方の魅力を会わせ持つ名作。いや名作って言葉もはばかれる。何か新しい事件があるって言うよりも、一つの事柄を優しい美しい言葉で描く。心に響くんだよ、ふとした表現が。連なる一つの大切なものが、ストーリィの中心を貫き通す。作品の中にも作品が生き、作品の外にすら作品が生きているような感覚。自分に向かい合い相手を想う時間。神秘があるから、ミステリィ。これも一つのミステリィ