北方謙三『秋霜』

秋霜 (角川文庫)

秋霜 (角川文庫)

ふと絵を描きたくなる。風景を写し取るだけなら写真で十分なのだろうけど、己の今のありようをキャンバスにぶつけたくなり、絵筆を握ってみたくなる。理屈ではありえない事、ただその時の想いが突っ走り、己に行動を起こさせる一人の人にかけてみたいと想える強さ。その人の為では無い自分という人間の為に、愛しい人守り抜きたい。その人に自分という存在がある事を解って欲しい。「おまえには俺がいる」男なら一度は憧れる科白、そして最も場所を選ぶ科白の一つ、その科白を男の人生が、一瞬気がついた事が、沢山のものを通してそれを叫ぶ男を重く熱いものにする。カッコイイ。