茅田砂胡『空漠の玉座』

母親と言う存在の強さ。24年間、自らの思いを心の内側に封じこめ王宮の内側で己の目と耳で総てを判断しようと、動きつづけた母。嘘は決してつかない、だが言うべき事は最後の最後まで言わない。24年という長い年月の間には自分の真実すら揺らぎそうになった事もあったかもしれない。だが彼女は耐えた。その精神の高貴さには感服させられる。ここしか無いと言うくらいの最高の場面で己の知っている事を告白する、自分の手札を開く、彼女には深い考えよりも前に、前王のそして己の愛が曲解される事を恐れていたのかもしれない。知りたかったのかもしれない。その強さのおかげでウォルは王座に帰る事が出来た。一人の戦士として、一人の人間として、王と言う立場に帰る事が出来たのだ。この巻の数多い名場面は読んでいるだけで楽しくなってしまう。