茅田砂胡『白亜宮の陰影』

身分と言うものが血縁に及ぼす影響の大きさ。今まで信じていたものが、明かされる真実によって大きく変化させられる。それを、元々あった思いを思い出させようと、もう一度お互いの素直な思いを確認させようと、数人の仲間を引き連れて城の最深部の地下牢に侵入し、父を、ウォルの育ての父を救出にリィが動く。リィの大健闘虚しく、ウォルの義父は夥しいほどの拷問で死ぬ寸前。ウォルを連れてきてくれと仲間に頼むリィ。今まで、国王と臣下の立場を崩せなかった義父がリィの存在を借りて長く思いつづけてきた事を独白する場面は、涙無しでは文字が終えない。読者の立場としてリィの存在がとてもありがたく思えた。リィのおかげで一瞬だけ元のあるべき立場に戻れた二人。この巻一番の名場面かもしれない。