三島由紀夫『禁色』

禁色 (新潮文庫)

禁色 (新潮文庫)

漫画のキャラクタが読んでいる事から読みたいと思い、思いっきりハマル。文字の使い方が旧字体なので最初は非常に読み難い印象を受けるのだが、ページを捲っていくにしたがって、だんだんとこの文字にも慣れてきてしまい、全く気にならなくなる、かえって雰囲気が盛りあがって気分がよい。今までこの作品を読まなかったのが勿体無いくらいだ。文章がとても綺麗で多大なる比喩表現の限りなき巧さに包まれていると、いつのまにかこの作品世界と同調している自分に気付く。ストーリィ自体もとても素的、端々に作者の知性を感じさせ、最初は単なる同性愛者の生活を描いた物語かと思っていたら、ラストシーンで一転、隠されていた様な鋭敏なテーマにはじめて気が付く。暫くこの作家を心に刻み付け、時々読んでいきたい。面白いぞ、この人の作品。