藤木稟『陀吉尼の紡ぐ糸』

陀吉尼の紡ぐ糸 (トクマ・ノベルズ)

陀吉尼の紡ぐ糸 (トクマ・ノベルズ)

トリックも登場人物でさえも全体を構成する極一部に過ぎない、こういう意味では京極夏彦のイメージは確かに強いのかもしれない。だが、それじたいは小説を書く上でのスタイルであって、作者はオリジナルで非常に興味深い世界を俺に見せてくれた。トリック自体は一部でしかないのだけど、ここに在るものが何一つ欠けてもこのストーリィは読んでてもはまれなかったかもしれない。そして時代背景、あまりにも日本の歴史を忠実に追っている分特に二次大戦、日清戦争前夜と言う、日本がもっとも妖しくゆれる時期、何が起こっても納得させられる雰囲気の中で起こる不思議。注目したいシリーズだ。