姫野カオルコ『終業式』

終業式 (角川文庫)

終業式 (角川文庫)

手紙だけで綴られる物語。手紙には決してすべてがかかれているわけではない。書かれていない範囲の方がとても多い。だからこそ、一言の持つ力がそこから喚起されるイメージが強いように感じる。書くことによって、言葉としてまとめることによって自分の考えていることが自分に見えてくる。ただ考えているのではなくて、形にすることによって、思い出しやすくなり、伝えやすくなる。それを伝える伝えない、送る送らない。送られなかった手紙達。文章から溢れてしまった言葉達。想像すると自然と切なくもなってくる。私が今まで書いた文章たちを集めたらどんなお話になるのだろうか、私が今まで受け取った文章達を並べたらどんな世界に彩られるのだろうか。自分を描写しているだれかがいるのではなく、こうしてふと立ち止まって言葉にする自分がいるだけ。