北方謙三『碑銘』

碑銘 (角川文庫)

碑銘 (角川文庫)

シリーズ物を読む場合にのみ感じ得る、あの1冊読むごとにどんどんと世界と同調していく様な気持ち。架空の町が自分の内で確りと息づき形付けられてくる。まるで自分が実際にその場にいるかのような現実感を持って感じられる風景。事件とか謎と言う意味ではあまり大きな事件は起きていないのだろう。そんな事がどうでも良く思えるくらい登場する男達がカッコイイ、カウンタで酒をくらう姿や、シェイカを振る姿、思い描くだけでとても憧れてしまう渋い男達が生きている。事件としての謎は無い、けど生きると言う事に対してはとても謎めいている。自信家に見せるのが上手なこわがり。自分に対して狡さを見とめたくない若者。過去は溶けた氷の様なもの……