桐野夏生『OUT』

OUT(アウト)

OUT(アウト)

日常と非日常の差異って紙一重なんだなぁとつくづく思わされる。はじまりは何でもない事、切欠になるような事は沢山あったのだがそれだけじゃぁ何も起きない、それを超えるホント何気ない一瞬。そこに至る様々の絡み。それだけで非日常の扉は開く。相変わらず日常生活には諸問題を抱えつつ、最初非日常だった事もいつの間にか続いていくうちに当たり前の日常になっている。ラストシーンの芸術的なまでの美しさ。一人の男と女の目を通し一つのシーンを別々な視点で描く。互いの心の叫びが文字を通し伝わる。互いの心の錯綜、模索、同型がひしひしと伝わってくる。緊張のラストシーンを通じて何の為に何を求めていたのかが少しずつ判ってくる。ただ、エピローグのシーンは無くても良いように思った。