麻耶雄嵩『夏と冬の奏鳴曲』

夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社文庫)

夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社文庫)

アイディンティティ、自己同一性。この言葉の持つ意味の奥深さを感じた。どんどんと文章とシンクロして行き自己の存在が霞がかってきてどんどん、朧気になってくる。推理シーンもない、探偵も厳密な意味では登場しないミステリィ。だがこれがメルカトル鮎。足元から立っている所が聞こえない音を響かせて崩れて行く恐怖。カタストロフィと表現する事もいるし、叙述トリックと言う人もいる。とても奇妙な高揚感。すごく面白い。