篠田真由美『灰色の砦』

シリーズ物で読みたいものの一つ主人公同士の出会いのエピソード、そして京介の若かりし頃のエピソード、深春の一人称視点で蒼に語るって感じで進んで行く……あの京介の涙を見ることができる巻この人を通して語られるこの事件はあまりにも悲しいものが多い。最初のありふれてそれでいて鬱々とした日常から、非日常への飛躍。そして次々と明らかになる驚愕の事実。悪人のいない、巡り合わせと運命と……そこに生きる探偵と呼ばれる立場になってしまった人の悲しさの探偵小説であり、下宿に住まう大学生達の青春小説でもある。出会いとそして別れが進行形で存在する心苦さかな。